10年ほど前に動的治療を終えて、保定に入った患者さんが今日来院した。現在は仮診療所で手狭なため、ここには僅かな資料しか置いてなく、10キロほど離れた倉庫にすべて保管してある。
このような場合、それを取りに行くため電話がかかってきても、当日と言うわけにはいかない。資料は整理してあるため探すのにそれほど困難はなかった。
カルテを見ると当時20歳くらいの女性で、保定になってからは2回しか来ていない。そして2回目には「リテーナーの使用はよくないが比較的安定している」と書かれていた。
そしてカルテはそれから1年後くらいに「終了」の扱いになっていた。
来院して口の中を診て現在の歯列咬合と10年前の動的治療の終えた時の歯型を比べてみると、大きくはくずれていない。まあ安定しているほうだと見た。
しかし抜歯スペースはすこし空いてきているところもあり、僅かな叢生もみられる。
リテーナーは10年間、上顎だけを、たまに使用していたが最近なくしたと言う。
いままで使っていたリテーナーと同じものを作ってほしいと言うが、10年前の模型で作るわけにもいかない。
そこで、このままリテーナーを使わないか、気になる部分の歯をを模型上で動かして柔らかい素材でリテーナーを作るかどちらかの選択を提案して、後者となった。
保定を開始してすぐに来なくなってしまう人は決して少なくはない。その心理はどんなものなのだろうか。あれだけ保定の重要性は説明したはずなのにと思う。来院しないのに10年リテーナーを全く使っていなかったわけではなかったのは?
いろんな事情や考え方があるのだろうと思う。しかし10年たっても、訪ねてきてくれる人がいるので資料は捨てられない。