初診は1994年で、当時32歳の男性だった。
その方は今も年に1度見せてくれている。
矯正は長い治療だが20年間見せてくれる人も少ない。
長期観察していると矯正治療後の安定ということがわかってくる。
このケースは抜歯ケースとして、それなりに仕上げたつもりだったのに、今日見ると、叢生は起きているし、バイトも深くなっている。
だからと言って元通りに戻るわけではない。
クロスバイトになっていた左上側切歯は戻っているわけでもなく、叢生にもなっていない。
しかし、その隣の左上中切歯は舌側に入り、それに押されて下顎中切歯も舌側に入り込んでいる。
初診時とはちょっと違い、まさに戻ったとは言い難い。
でも結局20年たち、仕上げた状態で安定していなかったのは事実だ。
リテーナーは数年間で止めている。
今までリテーナーをずっと使っていたらどうだったろうか。
多分仕上げた状態に近い様子が見られただろう 。
リテーナーなしで安定することが理想だと思うが、現実にはなかなか難しい。
だから矯正歯科医からリテーナーを辞めていいよ、とはなかなか言えない。