矯正治療は診断時に抜歯部位を決めたそのスペースをうまく使い治療する。
今日のケースは20代女性、上顎前突に加え、かなり口元が出て口唇閉鎖不全がある。
当然、上顎の両側第一小臼歯は抜歯するが、下顎を抜歯、非抜歯に迷った。
口元を後退させるためには下顎も抜かなければならない。
しかし、下顎を抜いてオーバージェットを減少させるのに苦労する症例もある。
また、下顎非抜歯ではオーバージェットは残さないが口元の改善が不十分となる。
加えて、余った抜歯閉鎖のため臼歯を近心に移動させるのに手間取ることもある。
今回のケースでは抜歯、非抜歯、部位については上顎犬歯を遠心移動の後にしようと考えた。
それが終わっても下顎の叢生が気になり、その改善をしてからとさらに決定を延ばした。
そして今日で開始してから1年が過ぎてしまった。
そこでやっと見通しがついた。下顎を抜歯しよう、部位は両側の第2小臼歯と患者さんに提案した。
診断時や治療経過でそんな話はしてあったので、理解はしてもらえたが、少し迷いもあった。
今から抜けば治療期間は延びる。しかし診断時では決めかねた抜歯がはっきりしてきた。
矯正治療を半世紀近くやってもまだ診断時に自信をもって決められないこともある。
決定を延ばすことで治療期間は延びることになるだろうが、より正確な治療方針となる。
やむを得ないのかな。