約1年前に60歳女性で歯周病が中程度に進行し、歯槽骨内には12本のインプラント植立してある患者さんが一般歯科医院から紹介されてきた。
主訴は下顎前歯が唇側傾斜して、インプラントの上顎前歯と反対に咬んでいることだった。
どのような治療をするか悩んだが、左下第2小臼歯が保存不可能だったため、その抜歯で下顎前歯を後退させる隙間を得た。
下顎のみにマルチブラケットを装着し、クロージングアーチで隙間を閉鎖しながら前歯を後退させた。
さらにⅢ級ゴムをかける必要があり、上顎にクリアリテーナー形態の装置をつくり、それを固定源とした。
しかし、片側の抜歯のため、下顎アーチ形態が歪んでしまう。
加えて、歯周病があるので歯はだいぶ動揺し始めてきた。
そこで、下顎前歯を後退させたセットアップモデルで薄いクリアリテーナを作成した。
歯を動かしながら、留める、これを3度繰り返し、被蓋関係もアーチフォームも動揺も改善した。
そして先月、厚いクリアリテーナーを作り保定に入った。
患者さんの希望により、今日、固定式の保定とも動揺歯の暫間固定とも取れるワイヤーを下顎前歯舌面に接着した。
今日の状態では、咬合が改善したためか初診時より歯周の状態は改善しているように見えた。
今後は歯周病治療を紹介された一般歯科医院で診てもらうので当院での矯正治療は終了とした。
1年間、治療方針に悩み、途中で歯の動揺を心配した症例だったが、良い結果で終わってよかった。